「製造業 管理職 仕事内容」で検索すると、生産管理、品質管理、原価管理、人材育成、安全衛生——といった項目が並ぶ。
間違ってはいない。ただ、実際の1日はあんなに整理されていない。
私は製造業で25年働き、そのうち何年かを課長として過ごした。35名の部門を統括し、生産・品質・安全・コストをまとめて見る立場だった。あの頃、実際に何に時間を使っていたのかを書いておきたい。求人票にも職務記述書にも出てこない部分を含めて。
朝礼が始まるまでに、やることがある
出社してから朝礼までの時間が、実は一番忙しい。
まず前日の実績を確認する。計画に対してどうだったか、不具合は出ていないか。次に購買依頼の確認と承認。災害連絡書があれば目を通す。当日のスケジュールとタスクリストを確認する。
それから現場を巡回する。数字だけ見ていても現場の状態は分からない。設備の音、人の動き、置かれているものの量。歩いて見ておくと、その日どこで問題が起きそうかの見当がつく。
そして朝礼の直前に、全体へ伝える連絡事項を頭の中で整理する。伝えたいことは毎日いくつもあるが、全部話しても残らない。何を要点として残すかを絞る。この数分の整理を省くと、朝礼が長いだけで中身のない時間になる。
ここまでを終えて、ようやく朝礼が始まる。
日中は、タスクリストと会議で埋まる
「何に一番時間を取られていましたか」と聞かれると、答えに困る。特定の業務に偏っていた記憶がないからだ。
タスクリストと、会議・打ち合わせが満遍なく埋まっていく、という感覚に近い。
定例で発生する仕事だけでも、これだけある。週報のまとめと作成。前月データの分析。原価会議や事業会議の資料作成。月次の安全活動の取りまとめ。月次のISO活動。
そして全社の会議が、月平均で4〜5回。1回あたり2〜3時間かかる。単純計算で月に10時間以上が、自部署の外の会議に使われることになる。
この時点で、いわゆる「管理職らしい仕事」——現場を良くするための改善や、人を育てる時間——は、まだどこにも入っていない。不良率の改善にしても予防保全の仕組みづくりにしても、この隙間を縫って進めることになる。
そこへ、週2回の「半日」が割り込む
予定を組んでも、その通りに進む日は多くない。
感覚として、大きなトラブルは週2回くらい。1回あたり半日ほど持っていかれる。設備が止まる、品質の異常が出る、納期に影響が出る。どれも後回しにできない。
やっかいなのは、トラブルが立て続けに起きることがある点だ。1日まるごと対応で終わる日もあった。その日にやるはずだった仕事は、翌日以降にずれる。ずれた分は、どこかで巻き取るしかない。
製造業の管理職の仕事を一言で説明しにくいのは、たぶんここが理由だ。定例業務の上に、読めない突発対応が毎週乗ってくる。この構造を前提に組み立てないと、計画そのものが機能しない。
年に数回、まとめて時間を持っていかれる仕事
毎日ではないが、時期が来ると一気に負荷がかかる仕事もある。
一番大きかったのは、部下の個人面談だ。1人45分、それを30人。単純に足しても22時間を超える。しかもこれは面談そのものの時間で、準備は別にかかる。
面談前には、一人ひとりについて話す内容を整理し、一次評価の結果とフィードバックをまとめておく必要がある。適当に臨めば、相手には必ず伝わる。年に数回しかない、部下と正面から向き合う時間だからこそ、準備を削れなかった。この時期の負荷は相当なものだったが、人を育てるうえで一番効いた時間でもあったと思う。
ほかにも、次年度の予算資料作成、年度末の実績まとめがある。どれも数字を積み上げる作業で、片手間ではできない。昇格者研修の設計と指導が重なる年もあった。
求人票に書かれていない仕事
ここからが本題かもしれない。
「管理職なのに、こんなことまでやるのか」と思った仕事が、いくつもある。
現場が入力したエクセルデータの、入力間違いの修正。数式がエラーになっているのを直す作業。現場のPCスキルには差があるので、気づいた人間が直すしかない。
作業者同士の小競り合いの処理。どちらの言い分にも理があり、どちらかを裁くわけにもいかない。話を聞いて、間に立って、収める。
開発担当と現場作業者の仲裁。条件が合わない、指示が伝わっていない、責任の所在が曖昧。ここも間に入る仕事だ。
製品置場が満杯で置けなくなったときの、仮置場の確保。実際にモノを動かす片付け作業。
どれも、職務記述書には載っていない。生産管理でも品質管理でも人材育成でもない。ただ、これをやる人がいないと現場は止まる。誰の担当でもない仕事が現場には無数にあって、最後は管理職のところに集まってくる。
やっている最中は「なぜ自分が」と思うこともあった。ただ、こういう仕事を引き受けているかどうかは、現場の人がよく見ている。信頼は、たぶんこういうところで積まれていく。
管理職の仕事は、職務記述書には収まらない
1日を振り返って整理すると、こうなる。
朝礼までの確認と巡回。日中はタスクリストと会議。そこへ週2回、半日規模の突発対応が割り込む。年に数回、面談と予算と実績まとめが重なる。その全部の隙間に、名前のついていない仕事がある。
求人票に書かれた「生産管理・品質管理・人材育成」は嘘ではない。ただ、実態の半分でしかないと思う。残りの半分は、書きようがないから書かれていないだけだ。
これから製造業の管理職になる人がいたら、そこは覚悟しておいたほうがいい。そして、いまその真ん中にいる人がいたら——名前のついていない仕事を引き受けているのは、あなただけではない。
ここで触れた仕事を、個別に書いた記事
- 35名の製造部門をまとめるために、私がやめた3つのこと
- 重大労働災害ゼロを6年間維持した話|製造業管理職が現場でやり続けたこと【実体験】
- 収率を15%改善して社長賞をもらった話|30歳の現場リーダーが、誰も助けてくれない中でやったこと
- 製造業の人手不足に、現場はどう向き合ったか|経験者2人でフル生産を回した話
- 製造業マネジメントの現場から|全記事まとめ
交代勤務の運営については、別記事で詳しく書いています。
開発担当と現場の仲裁について、実際に何をしていたかはこちらです。
人が定着しない現場のマネジメントについては、こちらに書いています。
予算資料の作成や設備投資の申請を、実際にどう通していたかはこちらです。
この課長職を手放して、転職先では主任からのスタートになりました。その判断についてはこちらに書いています。
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時間外に何が起きていたかも含めた1日の全体像は夜中に電話は鳴るが、ほとんど出社しなかった|製造業の管理職が決めていた線引きにまとめています。
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