「夜勤はきつい」という話は、よく語られる。
ただ、3交代を組む側の話はあまり出てこない。シフトをどう並べるのか。夜中にトラブルが起きたとき誰が判断するのか。顔を合わせないメンバー同士の情報を、どうつなぐのか。
私は係長時代に、自分の部署で初めて3交代勤務を導入することになった。そのとき何を決め、何に失敗したのかを書いておきたい。
2交代までしか実績がない職場に、3交代を入れた
まず前提として、会社には3交代で常時稼働している部署が複数あった。勤務の時間帯区分も、深夜勤務にかかる各種手当も、会社の規定として整備されている。制度そのものは、すでに社内にあったということだ。
ただ、私の部署はこれまで2交代までしか実績がなく、夜勤帯を持つのは初めてだった。会社に前例はあっても、自分たちの現場には運用のノウハウがない。埋めなければならなかったのは、制度ではなく運用の側だった。
会社規定で定められている3交代の時間帯区分は、この形だ。
- 一直:6時55分〜15時30分
- 二直:14時25分〜23時00分
- 三直:22時30分〜7時00分
月曜から金曜の5日勤務で、土日は会社カレンダーに従って休みになる。見ていただくと分かるが、各シフトの時間は少しずつ重なっている。この重なりが、次の交代者への申し送りの時間になる。実際に運用してみると、この数十分が引き継ぎの生命線だった。
ただ、これで完全に足りたわけではない。生産量の確保と納期対応のため、一直と二直には月2回ほど土曜の休日出勤を要請することが多かった。3交代を組んでも、なお足りない時期だった。
最初に決めたのは「夜、誰が判断するか」
3交代で一番はっきりさせておかなければならないのが、判断の所在だ。
昼間なら、迷ったときに聞ける相手がその場にいる。夜勤帯にはいない。何かあったときに現場で止まってしまうと、生産が丸ごと落ちる。
そこで、遅い時間帯や夜勤帯にトラブルが起きた場合は、私または上長に連絡するよう指示した。判断を現場に押し付けず、こちらで受ける形にしたということだ。
実際に連絡が来る内容は、実務的なトラブルが大半だった。結果として、ほぼ自分が対応することになった。内容によっては、電話で済ませずに現場まで確認に行くこともあった。
また、すべてを夜中に処理する必要もない。申し送りの連絡だけで足りる案件は、翌朝の対応でよいと線を引いていた。夜に判断すべきことと、朝でいいことを分けておかないと、こちらも現場も消耗する。
部下には、夜中に連絡させないと決めていた
ここは、意識して守っていたことがある。
実務を分かっている部下がいても、その人に夜中の連絡がいかないようにしていた。勤務外だからだ。
詳しい人に聞けば早いのは事実で、そうしたくなる場面は何度もあった。ただ、一度それを許すと、その人は毎晩電話を気にして休めなくなる。しかも詳しい人ほど呼ばれる。結果として、現場を支えている人が最初に潰れる。
だから、夜間の連絡は自分と上長で受け止めるという線を引いた。この判断が正しかったかは分からない。自分の負担は明確に増えた。ただ、あのとき部下を巻き込んでいたら、体制はもっと早く壊れていたと思う。
引き継ぎは口頭が基本、でもそれだけでは足りなかった
引き継ぎは、シフトの重なり時間に、次の交代者へ口頭で申し送るのを基本にした。顔を見て話せば、細かなニュアンスも伝わる。
ただ、口頭だけでは抜けが出る。そこで、重要な用件、内容が複雑なもの、そして翌日まで顔を合わせない作業者同士のやりとりは、引き継ぎノートや社内メールで文章に残すようにした。
三直と一直の担当者は、シフトの巡り方によっては何日も会わないことがある。口頭前提の運用だと、この組み合わせで必ず情報が落ちる。
それでも引き継ぎは失敗し、シフト間で摩擦が起きた
仕組みを整えても、引き継ぎがうまくいかないことは多々あった。正直に書くと、それがきっかけでトラブルになったことも何度かある。
予定の間違い。材料の間違い。伝わっていたつもりのことが伝わっていない。
そして、3交代で一番やっかいだったのは、人の感情の部分だった。
あるシフトの担当範囲の仕事が遅れていたり、やるべきことが忘れられていたりすると、次のシフトの作業に影響が出る。そうなると、シフト間で小競り合いのようなことが起きる。「前の直がやっていない」「こちらは手一杯だった」——直接顔を合わせないぶん、相手の事情が見えない。だから、相手が手を抜いたように見えてしまう。
2交代のときにはここまで起きなかった。シフトが増えるほど、接点が減り、誤解が生まれやすくなる。3交代を組むなら、作業の引き継ぎだけでなく、シフト間の関係そのものを管理する必要がある。これは事前に想像できていなかった部分だった。
一番きつかったのは、帰宅後の判断だった
管理する側として、何が一番きつかったか。夜間の設備トラブルと品質トラブルへの対応だ。
きついのは、対応そのものより、情報が不明瞭なまま判断しなければならないことだった。
帰宅後に電話が鳴る。現場は動いている。設備の状態も、不具合の範囲も、電話越しに聞いた内容しか分からない。それでも、止めるのか続けるのか、いま決めなければならない。現場は判断を待っている。
しかも、いつ起きるか分からない。だから常に頭の片隅が現場につながったままになる。この状態が続くことが、時間の長さ以上に負担だった。
加えて、当時は自分も交代勤務のメンバーの頭数に入ることが多かった。現場に入っている間は管理業務ができないので、作業以外の仕事は残業でこなすしかない。結果として、残業はかなり多くなっていた。
3交代は、人を並べれば回るものではない
振り返って思うのは、3交代化は「シフト表を作って人を割り当てれば動く」ものではないということだ。
夜に誰が判断するのかを決める。夜中に呼ばない相手を決める。口頭で足りない引き継ぎを文章に残す。会わないシフト同士の関係に気を配る。この全部をやって、ようやく回り始める。
もしこれから自分の職場に夜勤帯を入れる立場の人がいたら、誰をどの直に配置するかを考えるより先に、この4つを決めておくことをおすすめしたい。時間帯や手当は会社の規定で決まっていても、運用は現場で作るしかない。私は、やりながら作った。先に決めていれば、もっと楽だったと思う。
この3交代化に踏み切った背景——受注が急増した時期の記録は、別の記事に書いています。
- 受注が予算比250%に跳ね上がった現場で、私は何をしていたのか
- 製造業の人手不足に、現場はどう向き合ったか|経験者2人でフル生産を回した話
- 製造現場の属人化をどう崩したか|マニュアル化を「お願い」ではなく業務にした話
- 重大労働災害ゼロを6年間維持した話|製造業管理職が現場でやり続けたこと【実体験】
- 製造業マネジメントの現場から|全記事まとめ
夜間帯に何かが起きたときの動き方については夜中に電話は鳴るが、ほとんど出社しなかった|製造業の管理職が決めていた線引きにまとめています。
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