故障が止まらない現場というのは、負のサイクルに入っている。
設備が壊れる。修理に時間がかかる。その間に生産が止まる。不良品が出る。納期が遅れる。そしてまた別の設備が壊れる——この繰り返しだった。
予備部品もない。作業者は設備の構造をほとんど知らないため、異常に気づかない。機械のどの状態が「正常」なのかすら、現場で共有されていなかった。重篤な故障が起きてから初めて対応する、という状態がずっと続いていた。
まず「正常に動く状態」を作ることから始めた
最初に着手したのは、設備の徹底的な修繕だった。当時の上司が主体となって動いた。予防保全どころではない——まず今動いている設備を、きちんと動く状態にすることが先だという判断だった。
傷んでいる箇所を洗い出し、優先順位をつけて直していく。設備が正常に稼働する状態を一台ずつ作っていく作業は、地味で時間がかかる。しかしこれをやらないと、何をしても土台が崩れる。「予防保全の前に、まず設備を正常に戻す」という当たり前のことを、徹底してやることから始まった。
予備部品のリストアップと優先順位付け
次に手をつけたのが、予備部品の確保だ。重篤な故障が起きても、必要な部品が手元になければすぐに修理できない。部品の入荷には時間がかかる。その間ずっと設備が止まる。
交換頻度が高そうな部品、調達リードタイムが長い部品を洗い出し、優先順位をつけてリストを作った。すべての部品を在庫するのはコストがかかるため、「これだけは必ず手元に持っておく」という基準を設けた。当たり前のように聞こえるが、それまでは「故障してから発注する」が当然になっていた現場で、この発想の転換には時間がかかった。
作業者への保全教育と「自主保全士」の資格取得
設備が整ってきたタイミングで、作業者への保全教育を始めた。基礎的な内容から順に教えていった。
作業者が設備の知識を持っていないと、異常に気づけない。音が変わった、振動が増えた、油が漏れている——こういったサインを「おかしいかもしれない」と感じられるかどうかで、故障を未然に防げるかどうかが変わる。異常の早期発見は、管理職や保全担当者だけではカバーできない。現場で毎日設備に向き合っている作業者が気づけるかどうかが重要だった。
教育を進める中で、リーダー・サブリーダー・将来的にリーダークラスになっていく人材を選出し、「自主保全士」の資格取得を推進した。自主保全士はTPM活動における設備保全の国家資格に準じた資格で、体系的な保全知識を身につけることができる。資格の勉強を通じて知識が定着し、現場での判断力が上がる。さらに「自分が保全を担う立場だ」という当事者意識も生まれた。
現場の反応は、正直に言えばすんなりではなかった。設備の点検やメンテナンスは、通常の生産作業より難易度が高く、面倒な作業が多い。嫌がる人もいた。ただ、「なぜこれをやるのか」を丁寧に説明し続け、資格という形で取り組みを見える化することで、概ね協力してもらえるようになっていった。
故障データの蓄積と、周期の把握
並行して取り組んでいたのが、故障のデータ化だ。いつ・どの設備で・どんな故障が起きたかを記録し続けた。
データが蓄積されてくると、故障の周期がつかめてくる。「この設備はだいたい◯ヶ月ごとに同じ箇所が壊れる」というパターンが見えてくる。パターンが分かれば、その前に手を打てる。これが事前修繕への移行の土台になった。
重度事後修繕→軽度事後修繕→事前修繕へ
体制の変化は、段階的に起きた。
最初は「重篤な故障が起きてから修理する」という重度事後修繕の状態だった。設備の修繕が進み、予備部品が整い、データが蓄積されてくると、「軽度のうちに気づいて修理する」軽度事後修繕が増えてきた。さらにデータと教育が積み重なることで、「故障する前に手を打つ」事前修繕の割合が少しずつ上がっていった。
突発故障30%削減という数字は、この移行が少しずつ進んだ結果だ。私が本格的に関わり始めてから3〜4年。上司が着手した段階から数えると、5〜6年かかっている。
早い話ではなかった。ただ、体制を作るとはそういうことだと今は思っている。仕組みが現場に根付くには、時間がかかる。
この記事で書いた実績——突発故障30%削減、予防保全体制の構築——は、転職活動の際に職務経歴書に記載しました。製造業管理職の経験をどう書類に落とし込むか、実際に使ったテンプレートをnoteにまとめています。
▶︎ 40代管理職のための職務経歴書テンプレ(¥480)
40代管理職の職務経歴書はなぜ通らないのか?実際に落ちた実例と通過した改善例【製造業・1社経験】|Yuton40代管理職の転職では、職務経歴書が合否を左右します。 私は実際に7回書き直しました。 業務内容を書いているだけでは通らない。 評価されたのは「成果の再現性」と「経営視点」を入れてからでした。 本noteでは、40代管理職向けに“通る職務経…



コメント