人を育てるのは、自分が成果を出すより難しい。
製造業の管理職をしていたとき、昇格者研修の設計と指導を任された。すべての昇格者が対象だった。リーダー、サブリーダー、若手——それぞれ立場も力量も違う相手に、どう向き合うか。試行錯誤の連続だった。
その中で気づいたことを書いておく。人を育てる立場にある人の、何か参考になればと思う。
昇格者研修の大枠
会社の仕組みとして、リーダー・サブリーダー、それに準ずるランクには昇格者研修があった。
流れはこうだ。昇格時に2日程度の座学研修を受ける。その後、各自が自分の職場の課題や問題を抽出し、優先度の高いものから改善に取り組む。そして1年後、昇格者研修報告会として、社長・役員・部門長クラスの前で成果を発表する。
課題解決に必要な知識は、社外研修を組み合わせて習得させた。2〜3ヶ月ごとに進捗を確認し、難航している部分にアドバイスをし、改善が進んだら追加の課題を設定していく。任せきりにせず、伴走し続ける形だ。
若手には、制度がなかった
一方で、若手の昇格者には、こうした会社の制度がなかった。
そこは自分で設計するしかなかった。年度初めの人事面談で、一人ひとりと話しながら決めていった。この1年でどう動いてほしいか、どうなってほしいかというビジョン。そのための具体的なアクション。自分の担当業務で、目先の課題をどう解決するか。
決められた枠がないぶん、相手に合わせて作る必要があった。手間はかかったが、一人ひとりに向き合う時間にもなった。
通常業務の延長から始めさせた
研修を進める中で、最初にぶつかった壁がこれだった。
通常業務に加えて課題に取り組ませると、業務が多忙すぎて続かない。結局、課題が放置されてしまう。理想的な改善テーマを設定しても、現場が回らなければ意味がない。
だから、通常業務の延長線上でできるものから手を付けさせた。今やっている仕事の中に課題を見つけ、その流れの中で改善していく。負荷を分けて考えるのではなく、業務そのものを少しずつ良くしていく形にした。
この方が継続できたし、本人の実感も伴った。
期限を意識させ続けるのが、一番大変だった
もう一つ、繰り返し直面したのが「期限」の問題だ。
提出期限を意識しない。期限までに終わらないことが多い。これは能力の問題ではなく、習慣の問題だった。日々の業務に追われると、締め切りのある課題は後回しになる。
だから、日頃からフォローし続けた。「あの件、進んでる?」「報告会まであと何ヶ月だよ」と、こまめに声をかける。放っておいて期限直前に慌てるのではなく、途中で何度も確認を入れる。期限を意識する習慣そのものを、時間をかけて身につけてもらう必要があった。
PCスキルから教えることもあった
意外と時間を取られたのが、PCスキルの指導だった。
製造オペレーターは、PCを使う機会が少ない。Excelでのデータ入力、集計、分析。PowerPointでの報告資料の作成。報告会で発表するためには、これらのスキルが必要になる。でも、そこから教える必要がある人も多かった。
課題の中身以前に、それを形にする道具の使い方から。手間はかかったが、これも本人にとっては財産になるスキルだと思って、丁寧に教えた。
最後に
人を育てるときに大事にしたのは、立派な研修プログラムを作ることではなかった。
相手の今の力量に合わせて、続けられる形にすること。負荷をかけすぎず、でも期限の意識は持たせること。道具の使い方からでも、必要なら教えること。
地味だが、これの積み重ねでしか人は育たない。自分が成果を出すのとは違う難しさがあり、違うやりがいがあった。
部下や後輩を育てる立場にいる人に、何か一つでも持ち帰ってもらえればと思う。
人手不足の中で教育計画をどう回したかは、こちらでも触れています。
昇格の手前で、評価そのものがどうつけられていたかは部下の評価を25人分つけていた側の話|頑張っても必ず反映されるとは限らない理由にまとめています。
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