部下がミスを報告しなかったとき、何を叱るか|製造業の管理職が「悪い情報ほど早く」を徹底した理由

製造業マネジメントの現場から

部下のミスより怖いものがある。

ミスが起きているのに、それを知らないことだ。

製造業で25年働き、課長として部門を見てきた。ミスはどうやっても起きる。人が作業する以上、ゼロにはならない。だからミスそのものには、ある程度の覚悟ができていた。

それでも、部下がミスを報告してこなかったと分かったときだけは、はっきり叱った。何を叱り、何を叱らなかったのか。そのあと部署に何を伝えたのか。管理職として大事にしていた順番を書いておきたい。

叱ったのは、報告しなかったこと

報告されていなかったミスに気づいたとき、私が最初に叱ったのは、報告をしなかったこと、それ自体だった。

ミスの中身ではない。不良を出したことでも、手順を間違えたことでもない。起きたことを、上に上げなかったこと。ここだけを叱った。

そして叱ったあとに、必ず言葉にして伝えた。ミスをしたこと自体を叱ったのではない、と。

ここを曖昧にすると、相手には「ミスをしたから怒られた」としか残らない。そうなると、次にミスをしたとき、その人が考えるのは「どうやって怒られずに済ませるか」になる。つまり、隠す方向に動く。ミスを叱ると、報告が消える。だから何を叱ったのかを、はっきり分けて伝える必要があった。

報告しなかったら、どうなりうるか

次に話したのは、報告しなかったら、どういう結果になりうるかだった。

ミスをした本人は、たいてい「これくらいなら自分で何とかできる」と考えている。大ごとにしたくない。迷惑をかけたくない。気持ちは分かる。悪気があるわけではないことも多い。

ただ、製造の現場では、小さなミスが小さいままで終わる保証はない。不良品が次の工程に流れる。気づかないまま出荷される。設備の異常を見過ごして、もっと大きな故障につながる。報告が遅れるほど、取り返しのつかない事態に近づいていく。

本人が一人で抱えているあいだにも、事態は進む。その時間を、私は一番恐れていた。

悪い情報こそ、上司に委ねてほしい

そのうえで伝えたのが、この考え方だった。

悪い情報こそ、迅速に上司に報告する。

良い報告は、少し遅れても困らない。困るのは悪い報告のほうだ。悪い情報は、早く上がってくるほど打てる手が多い。出荷を止める、工程を見直す、関係部署に連絡する、顧客に先に伝える。どれも、知るのが早ければ早いほど被害は小さくて済む。

そしてもうひとつ、部下に伝えたかったことがある。取り返しのつかない事態になる前に、上司に委ねてほしい、ということだ。

一人で何とかしようとしなくていい。被害を最小限に食い止める判断をするのは、上司の役割だ。そのために上司がいる。報告するというのは、責任を押しつけることではなく、判断を、それができる人に渡すことなのだと。

再発防止は、一緒に考える

叱って終わり、にはしなかった。

最後にやっていたのは、本質的な再発防止対策を、一緒に検討することだ。

なぜそのミスが起きたのか。手順に無理があったのか、確認の仕組みがなかったのか、教え方が足りなかったのか。本人の注意力だけの問題にせず、同じミスが起きない仕組みを考える。「次から気をつけます」で終わらせると、同じことは必ずまた起きる。

作業ミスを仕組みで減らしていった話は、不良率を8%改善したときに実際にやったことにも書いた。ミスを個人の問題にしないことと、報告を叱らないことは、根っこが同じだと思っている。

本人だけでなく、部署全員に周知した

この件は、本人と話して終わりにしなかった。

悪い情報は、取り返しのつかない事態になる前に上司に委ねて、被害を最小限に食い止めることが最優先だ——これを、部署全員に周知した。

一人に言っただけでは、他の人は「あの人が怒られた」としか受け取らない。むしろ「報告すると怒られる」と誤解されるおそれすらある。だから、何が叱られて何が叱られないのかを、全員が同じように理解している状態にしておく必要があった。

これは安全活動の考え方とも重なる。ヒヤリとしたこと、ハッとしたことを隠さず上げてもらう。重大労働災害ゼロを6年間維持したときにやり続けたことでも、言いにくいことを言える現場をどう作るかが一番の課題だった。品質のミスも、安全の異常も、上がってこなければ手が打てないという点では同じだ。

叱る順番が、報告の量を決める

振り返ってみると、私がやっていたのは、叱る中身を分けることだった。

報告しなかったことは叱る。ミスしたことは叱らない。結果がどうなりうるかを話す。悪い情報ほど早く委ねてほしいと伝える。再発防止は一緒に考える。そして全員に共有する。

この順番を間違えると、現場からは悪い情報が上がってこなくなる。管理職の耳に入るのは、手遅れになってからになる。

ミスはゼロにはできない。でも、ミスを知らない状態は、管理職の側で減らせる。何を叱るかを選ぶことは、そのための一番の手段だったと思う。部下とどう向き合ってきたかは、部下育成で意識し続けた2つのことにもまとめている。



部下とどう向き合い、現場をどう回してきたか。管理職としての経験は、書き方次第で職務経歴書の強い材料になります。製造業の実績を言語化する型をまとめました。

▶︎ 40代管理職のための職務経歴書テンプレ(¥480)

40代管理職の職務経歴書はなぜ通らないのか?実際に落ちた実例と通過した改善例【製造業・1社経験】|Yuton
40代管理職の転職では、職務経歴書が合否を左右します。 私は実際に7回書き直しました。 業務内容を書いているだけでは通らない。 評価されたのは「成果の再現性」と「経営視点」を入れてからでした。 本noteでは、40代管理職向けに“通る職務経…

コメント