人が定着しない現場を、どうまとめたか|派遣も若手も入れ替わる職場で管理職がやったこと

製造業マネジメントの現場から

せっかく育てた人が、辞めていく。

製造業の現場にいれば、避けて通れない問題だと思う。私の職場もそうだった。派遣社員は半年から1年に1回のペースで入れ替わり、若手の中でも「この人に任せたい」と思っていた人ほど、定期的に辞めていった。

人が足りないこととは、また別の苦しさがある。人数の問題ではなく、積み上げたものがリセットされ続ける問題だからだ。

定着しないと、何が起きるのか

入れ替わりが激しい現場では、こういうことが起きる。

まず、教育がイチからやり直しになる。ようやく一人で任せられるところまで来た人が抜けて、また同じ内容を最初から教えることになる。

そして、これが一番きついのだが、教える人のモチベーションが落ちる。時間をかけて教えた相手が辞めていくのを何度も見ると、次に人が入ってきたときの熱量が明らかに変わる。「どうせまた辞めるだろう」という空気が現場に出はじめる。ここまで来ると、教育の質そのものが落ちていく。

品質も不安定になる。経験の浅い人の比率が上がれば、ばらつきは大きくなる。安全面のリスクも高まる。ルールの背景を理解しないまま作業する人が増えるからだ。実際、重大災害ゼロを維持していた時期でも、不安全行動が多いのは若手や短期勤続の人だった。

さらに、教育している間は既存メンバーの業務カバーが増える。ただでさえ人が足りないところに、教える負担と、その人の分の作業が乗る。

辞める、残った人の負担が増える、疲弊する、教育の質が落ちる、また辞める。放っておくと、この輪が回り続ける。

私がやったのは「人に依存しない現場」を作ることだった

この状況に対して、私が手を打ったのは主に4つだ。いま振り返ると、その全部が同じ方向を向いていた。

一つ目は、作業基準書の作り込みと質の向上。人が入れ替わることを前提にすれば、手順が文書として残っていなければ話にならない。属人化を減らす取り組みそのものについては、属人化を崩した話に詳しく書いた。

二つ目は、センサーや自動設備を増やすこと。人の注意力に頼っている工程を、設備側で受け止める。これで既存メンバーの負担が減り、経験の浅い人でも回せる範囲が広がる。

三つ目は、作業環境の整備。働きにくい環境は、それ自体が離職の理由になる。

四つ目は、安全活動を充実させて、職場全体の安全意識を底上げすること。個人の経験に依存せず、職場の水準として安全を保てる状態を目指した。

並べてみて気づくのは、これらが「人を定着させる」対策ではないということだ。すべて「人が入れ替わっても回る現場を作る」対策だった。定着を諦めていたわけではないが、結果としてそちらに寄っていた。

でも、分かれ目は別のところにあった

では、辞めていく人と残る人の違いは何だったのか。

当時は、本人の資質や意欲の差だと思っていた部分もある。ただ、いま振り返るとそうではなかった。

差が出ていたのは、既存メンバーと新しく入ってきた人との距離感だった。もともといるメンバーの輪に入れているかどうか。声をかけてもらえているかどうか。

そしてもう一つが、業務指示とフォローがきちんとできているか。何をどこまでやればいいのかが分からないまま放置されると、人は続かない。分からないことを聞ける相手がいるかどうかで、最初の数ヶ月の居心地はまったく変わる。

つまり、辞める理由の多くは、入ってきた人の側ではなく受け入れる側にあった。基準書を整え、設備を入れ、環境を良くしても、この部分が抜けていれば人は残らない。

現場任せにしていた、という反省

ここが、いま一番悔いの残っている部分だ。

新しく入ってきた人の受け入れを、私は現場に任せきりにしていた。誰がどう教えるか、どこまで面倒を見るか、いつ独り立ちさせるか。そのあたりを、現場の判断に委ねていた。

仕組みは作った。基準書も設備も環境も整えた。しかし人の受け入れ方だけは、仕組みにしていなかった。

やるべきだったのは、二つある。

一つは、教育計画をきちんと作ること。誰が、何を、いつまでに教えるのか。人手不足の時期に作った教育計画で書いたような計画を、新規に入ってくる人に対しても用意しておくべきだった。

もう一つは、業務の分担と配分を、現場メンバーと一緒に考えること。上から割り振るのではなく、既存メンバーを巻き込んで決める。そうすれば、受け入れる側の当事者意識も変わったはずだ。教える負担が特定の人に偏ることも防げた。

設備や文書は、管理職が動けば整う。しかし人と人の関係は、放っておいても整わない。むしろそこにこそ、意識的に手を入れる必要があった。

入れ替わりは止まらない。それでもできることがある

人の入れ替わりを完全になくすことはできない。派遣という雇用形態がある以上、期間で入れ替わるのは前提だし、若手が別の道を選ぶこと自体は止められない。

だから、入れ替わっても回る仕組みを作ることと、入ってきた人が居られる環境を作ること。この両方が要る。私は前者ばかりに手をかけて、後者を現場任せにしていた。

いま人が定着しない現場で悩んでいる人がいたら、基準書や設備の前に、一度だけ確認してみてほしい。新しく入ってきた人は、誰かに声をかけてもらえているだろうか。分からないことを聞ける相手が、はっきり決まっているだろうか。

そこが空白なら、たぶんそれが一番大きな原因だ。

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人が入れ替わる現場で仕組みを整えた経験は、転職の書類で書き方が難しい部分です。製造業の実務を採用担当者に伝わる言葉へ変えるテンプレートを、noteにまとめています。

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