25年勤めた会社を出てから、次の会社に入るまで、土日を含めて3日しかなかった。
退職から入社までの期間というと、少し長めに休んで、旅行に行ったり家族と過ごしたりして、気持ちを切り替える——そういう話を目にすることが多い。私の場合は、そうはならなかった。
この記事では、その3日間に何をしていたのか、どんな気持ちだったのか、そして入社前に少し構えすぎていた話を書いておきたい。これから退職日と入社日を決める人の参考になればと思う。
空白が3日になったのは、結果としてだった
最初から3日にしようと決めていたわけではない。
転職先の入社日、残っていた有給休暇の消化、そして引き継ぎの業務。この3つの兼ね合いを調整していった結果として、そうなった。
有給は、引き継ぎをしていた2ヶ月の間に、なるべく消化するようにしていた。一方で引き継ぎは最後まで手が離せず、入社日も動かせない。どこかに長い休みを入れる余地は、自然となくなっていった。引き継ぎの2ヶ月のことは、退職時の引き継ぎで、渡せたものと渡せなかったものに書いている。
だから「3日で十分だった」と言いたいわけでも、「もっと休めばよかった」と言いたいわけでもない。退職日と入社日の間は、自分の希望だけで決まるものではない。いくつかの事情の兼ね合いで決まる。それを最初から知っておくと、少し気が楽になると思う。
3日間でやったこと
短い期間だったので、やったことは多くない。
ひとつは、提出書類の作成と送付。入社手続きで残っていた書類を作って、送る。地味な作業だが、これを入社日までに終わらせておかないと落ち着かない。
もうひとつは、会社のことを頭に入れておくこと。会社のホームページや製品について、AIを使って調べ、ある程度は頭に入れておくようにした。転職活動中の企業研究の延長のようなものだ。選考のときに一度調べてはいるが、入社するとなると、もう少し解像度を上げておきたかった。
それから、通勤経路の確認。25年同じ場所に通っていたので、新しい通勤そのものが久しぶりだった。何時に家を出れば間に合うのか、どこで乗り換えるのか。初日に迷わないように、一度確かめておいた。
不安と期待が、同じくらいあった
気持ちのほうは、正直に言うと複雑だった。
不安と期待が、同じくらいの大きさで同居していた。
新しい仕事の環境。ゼロからの人間関係。25年いた会社では、誰に何を聞けばいいか、どう頼めば動いてもらえるか、全部分かっていた。それが一度リセットされる。
そして一番大きかったのは、今までの経験が、ここで活かせるのかという問いだった。もっと言えば、自分はここで、どう活躍できるのか。役職が下がる転職を選んだ以上、経験で返すしかない。その経験が通用しなかったらどうするのか。
ただ、不安ばかりだったわけでもない。同じ問いは、裏返せば期待でもあった。経験が活かせるかもしれない。新しい場所で、また何かを作れるかもしれない。どちらの気持ちも本物で、3日間はずっとその間を行ったり来たりしていた。
試されていると思って、選手のことまで調べた
入社前の準備で、ひとつだけ印象に残っていることがある。
入社して間もないころ、会社の行事として、役員の方からスポーツ観戦に誘っていただいた。役員の方に同行して、一緒に試合を観る。
私はこれを、何か試されているのだと受け取った。入社したばかりの40代の中途社員が、役員と一緒に過ごす。その場でどう振る舞うか、どんな話ができるか。見られているに違いない、と。
だから、出場するチームのことや、選手のことまで調べた。話を振られても答えられるくらいの知識は入れておこうと、真剣に準備した。
結果として、特に意味はなかった。
会社の行事のひとつとして、一緒に観戦しようと誘っていただいただけだった。試されてなどいなかった。役員の方は普通に試合を楽しんでいて、私が仕込んだ選手の知識が役に立つ場面は、特になかった。
いま振り返ると、少し可笑しい。ただ、あのときの自分は大真面目だった。
40代の転職者は、たぶん構えすぎる
この話を書いたのは、自分の構えすぎ方に、40代の転職者らしさが出ていると思ったからだ。
25年同じ会社にいると、新しい環境で見られる側に回るのは久しぶりになる。しかも年齢的に「即戦力」として採られている自覚がある。そうすると、あらゆる場面を「評価の場」として受け取ってしまう。
でも実際には、受け入れる側はそこまで身構えていないことが多い。歓迎の意味で誘ってくれている。こちらが勝手に試験だと思い込んでいるだけ、ということがある。
転職活動中にも、似たことがあった。エージェントの初回面談で「構えすぎなくていい」と気づいたときと、構造は同じだった。準備をすること自体は悪くない。ただ、準備と身構えは別のもので、身構えるほど、その場を楽しむ余裕はなくなる。
入社前に何かを調べておくのは、悪いことではない。会社のことを知っておけば、初日の会話にも入りやすい。それでも、全部を試験だと思わなくていい。あの観戦の帰り道に、そう思った。
3日間の先に、入社初日があった
最終出社日の翌日から数えて、3日。
25年いた会社のことを振り返る時間も、次の会社に向けて気持ちを切り替える時間も、十分とは言えなかった。それでも、書類を送り、会社のことを調べ、通勤経路を確かめて、不安と期待を抱えたまま入社の日を迎えた。
最終出社日のことは25年勤めた会社の最終出社日に、そして入社した日のことは転職後の入社初日、私が感じたことに書いている。この3日間は、その2つの日のあいだにあった、短い空白だった。
- 40代管理職の退職時の引き継ぎ|後任が決まらないまま2ヶ月で、渡せたものと渡せなかったもの
- 転職後の入社初日、私が感じたこと|40代管理職のリアルな最初の1週間【実体験】
- 40代管理職が転職して最初に感じた現実と本音|想像と違った3つのこと
- 40代管理職の転職体験談まとめ|テーマ別全記事ガイド
不安と期待を抱えて入社してから1年。経験は活かせたのか、役職が下がる転職は正解だったのか。「よかった」と言い切れない部分も含めて書きました。
▶︎ 転職して1年、正直どうだったか——40代管理職が「よかった」と言い切れない理由(¥680)
転職して1年、正直どうだったか——40代管理職が「よかった」と言い切れない理由|Yuton「転職して、よかったですか」 そう聞かれると、いまも少し答えに詰まる。 25年勤めた会社を辞めて、別の会社に移った。もうすぐ1年になる。1年あれば、答えは出ていると思っていた。実際には、簡単に出せなかった。 理由は途中で分かった。「転職して…



コメント