夜中に電話は鳴るが、ほとんど出社しなかった|製造業の管理職が決めていた線引き

製造業マネジメントの現場から

製造業の管理職は、夜中に呼び出される。休日も会社にいる。そういうイメージがあると思う。

私の場合は、少し違った。夜間や休日に電話が鳴ることはあった。ただ、実際に呼び出されて出社することは、ほとんどなかった。

これは運がよかったからでも、無責任だったからでもない。出社するかどうかの線引きを先に決めていたことと、そもそも電話が鳴る回数を減らす手を打っていたことの両方による。

そして正直に書いておくと、同じ工場でも、課によってまったく事情が違った。そこも含めて書く。製造業の管理職への転職や異動を考えている人が、実際のところを知るための材料になればと思う。

出社する基準を、先に決めていた

線引きははっきりしていた。

労災、そして薬品の漏洩といった緊急事故。これが起きたときは出社する。人の安全に関わることと、外部に影響が及ぶ可能性があることは、電話で済ませてはいけない。現場に行って、自分の目で見る。

それ以外は、電話で口頭指示をして、翌日に現場で確認する。設備が止まった、品質に異常が出た、人が足りない。こうした連絡は入るが、夜中に私が駆けつけたところで、できることが増えるわけではない。

この基準を決めておくと、現場が助かる。何より大きいのは、「課長を呼ぶべきかどうか」で現場が悩む時間が消えることだ。基準がないと、呼ぶのも気が引けるし、呼ばずに判断するのも怖い。その迷いが、対応を遅らせる。

線引きは、管理職が自分の身を守るために作るものではない。現場が迷わないために公開しておくものだと思っている。

「翌日、必ず現場を見る」までがワンセット

電話で指示して終わり、にはしなかった。

翌日、必ず現場に行って状態を確認する。夜間にどう処置したのか、今は問題なく動いているのか、同じことがまた起きそうか。電話指示と翌日確認は、切り離せない一つの手順だった。

ここを省くと、現場はすぐに見抜く。どうせ来ない、報告しても見に来ない、と思われた瞬間に、夜間の連絡そのものが上がってこなくなる。翌朝になって「実は昨夜こんなことが」と知らされるほうが、よほど怖い。

電話で済ませるというのは、任せることであって、丸投げではない。その違いは、翌日の行動に出る。

同じ工場でも、課によってまったく違った

ここは正直に書いておきたい。

私の課は、こうしたやり方で回すことができた。しかし24時間操業をしている他の課の課長は、休日もほぼ会社にいたし、平日の帰宅時間も遅かった。同じ工場、同じ会社、同じ役職でも、生活はまったく違っていた。

これは本人の能力の差ではないし、会社が悪いという話でもない。操業形態が違えば、管理職の拘束のされ方も変わるというだけのことだ。夜間も設備が動いている以上、誰かが対応できる状態にしておく必要がある。交代勤務を組む側から見た現実は、2交代の職場に夜勤帯を導入したときの話に書いた。

だから「製造業の管理職はきついのか」という問いに、ひとことでは答えられない。会社ではなく、配属される部署の操業形態で決まる部分が大きい。転職や異動を検討しているなら、業界や企業規模よりも、その部署が何時間操業なのかを先に確認したほうがいい。求人票にも面接にも出てこない情報だが、日常はここで決まる。

鳴る回数そのものを、減らしにいっていた

もう一つ。線引き以前に、電話が鳴る回数を減らすことをやっていた。

一番効いたのは、設備の突発故障を減らすことだった。夜間の連絡で多いのは設備が止まったという内容だから、故障そのものが減れば連絡も減る。予防保全体制をゼロから作って突発故障を30%削減した話は、結果として自分の夜を静かにする取り組みでもあった。

もう一つは、現場が一次判断をできる状態にしておくことだ。処置の手順が特定の人の頭の中にしかない状態では、その人がいない夜は必ず管理職に判断が上がってくる。属人化をマニュアル化で崩していった話や、部下育成で意識し続けたことは、ここにつながっている。

実際、この2つが進むにつれて、夜間の電話の中身が変わっていった。「どうしましょうか」から「こう処置しました」に変わる。報告を受けて、了解と伝えて、翌日確認する。それで回るようになる。

もちろん全部はなくせない。労災や漏洩のような事故は、どれだけ備えても起こりうる。だから基準を決めてあった。安全側の備えについては、重大労働災害ゼロを6年間維持したときにやり続けたことにまとめている。

念のため書いておくと、これは転職の理由ではない

この話の流れで、夜間対応がつらくて転職したのだろうと受け取られるかもしれないので、はっきり書いておく。

違う。夜間や休日の対応は、私が転職を考えた理由ではまったくない。そこは回っていたし、家庭に影響が出たこともなかった。

私が25年勤めた会社を出た理由は別にある。そのあたりの本音と建前は、「なぜ転職するのですか」に何を答えたかに書いた。

製造業の管理職の働き方を語るとき、きつい話のほうが読まれやすいのは分かっている。それでも、自分が経験していないことを経験したように書くのは違うと思っている。回っていた部署は、回っていた。それが事実だ。

線引きを決めるのは、管理職の仕事

夜中に電話が鳴るかどうかは、部署の操業形態で決まる。そこは自分では選べない。

ただ、鳴ったときにどうするかの基準を決めることと、鳴る回数そのものを減らしにいくことは、管理職の側でできる。私がやっていたのは、その2つだけだ。

出社する条件を決めて公開する。それ以外は電話で指示して、翌日必ず見に行く。故障を減らし、現場が自分で判断できる状態を作る。地味だが、これをやるかやらないかで、管理職自身の生活も、現場の動きやすさも変わってくる。課長時代の1日と合わせて読んでもらえると、時間の使い方の全体像が見えると思う。



働き方に不満がなくても、転職を考えることはあります。私が2年弱かけて決断にたどり着くまでに、何をどう整理したのかをまとめました。

▶︎ 40代管理職が転職で「決断できなかった時間」を抜け出した思考整理ノート(¥980)

40代管理職が転職で「決断できなかった時間」を抜け出した思考整理ノート|Yuton
※このnoteは、40代・管理職として転職を考えながら、 年収と年齢を理由に決断できなかった人に向けて書いています。 決められなかった数年を、どう抜け出したのか。 年収と年齢で止まった思考を、動かすための記録。 40代・管理職。 情報は揃っ…

コメント