「なぜ転職を考えたのですか」
面接で、ほぼ毎回聞かれる質問だった。
正直に答えようとすると、本音は前の会社への不満や不安そのものだった。ただ、それをそのまま口に出すわけにはいかない。嘘をつきたくもない。本音と建前の間で、何を話すかをずっと考えていた。
本音は、焦りと不安だった
正直に書く。
現場では人手不足が進み、これまでのような生産体制を組むのが難しくなっていた。品質が落ち、クレームが増えるかもしれないという懸念もあった。営業の受注にムラが出て、減産が続く時期もあった。
管理職としての上のポジションは、本社からの出向者が占めることが多かった。このまま残っていても、自分の成長につながる実感が薄れていった。将来への不安があった。
年齢のことも考えた。動くなら、今しかないと思った。
それでも、25年その会社にいた理由も本音がある
「なぜ今まで転職しなかったのですか」という質問も、何度か聞かれた。
これも正直に言うと、転職そのものへの怖さがあった。収入が下がるかもしれないという不安もあった。当時は今のような売り手市場ではなかった。長くいるほど居心地がよくなり、「このままでいいかもしれない」と感じてしまう時期もあった。
変わらないことの方が、楽だった。
本音を、面接で話せる言葉に変えた
本音をそのまま話すと、不満や不安の羅列になってしまう。それでは前向きな人材だと思われない。
だから、本音の中にある「前向きな部分」を探して、言葉にし直した。
「なぜ転職するのか」には、こう答えた。
前職の業界は、今後大きく成長していく分野ではないと感じていた。一方で、様々な事業がある中で、需要や方向性次第で活躍できる機会はもっと広いはずだと考えた。これまで培ってきたマネジメントの知識・経験を、異業種というより大きな舞台で活かしたい——そう伝えた。
これは嘘ではない。本音にあった「将来への不安」を、「だからこそ広い舞台で挑戦したい」という前向きな言葉に変換しただけだ。
「なぜ今まで転職しなかったのか」には、転職を考えるきっかけとほぼ同じ理由を伝えた。「ここまで会社に貢献してきたという思いがあったが、今後を考えて動くタイミングだと判断した」という形にした。
本音と建前は、矛盾していない
本音をそのまま話すことと、建前を話すことは、別のことだと思っていた。
ただ振り返ると、建前は本音を否定するものではなかった。本音の中にある「前を向いている部分」だけを、相手に伝わる言葉として取り出しただけだ。
不満や不安を隠したわけではない。それを、面接という場で機能する言葉に翻訳しただけだ。
この変換作業は、一人で頭の中だけで考えていると堂々巡りになりやすい。エージェントの担当者に本音をそのまま話して、「それなら、こう言えば伝わりますよ」と一緒に言葉を整理してもらったこともあった。自分の中だけで建前を作ろうとせず、人に話しながら形にしていく方が、結果的に納得感のある答えになった。
最後に
「なぜ転職するのか」「なぜ今まで転職しなかったのか」——この2つの質問に、嘘をつかずに、かつ前向きに答えられるかどうかは、自分の本音を一度きちんと整理できているかにかかっている。
本音を隠す必要はない。本音の中から、相手に伝わる部分を選んで言葉にする。それだけで、答え方は変わる。
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面接で聞かれる質問に、どう答えればいいか迷う場面は他にもあります。実際に使った回答の型を、もう少し詳しくテンプレートとしてnoteにまとめています。
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