5S活動が形だけになる現場と、そうでない現場の違い|製造業の管理職がやっていたこと

製造業マネジメントの現場から

5S活動は、放っておくと必ず形だけになる。

毎月の報告のために、当たり障りのない場所を少し掃除する。写真を撮って、ビフォーアフターとして提出する。現場は本業で手一杯だから、そうなるのは当然だった。責める気にはならない。

それでも、25年やってきて言えることがある。5Sは、やり方を変えれば確実に効果が出る。物を探す時間が減り、設備の不具合が早く見つかるようになり、現場の動線がよくなる。

製造業の管理職として、自分の課で5Sをどう回していたのかを書いておきたい。きれいごとは抜きにする。

5Sは全社安全活動の一部として降りてきていた

前職では、5Sは独立した活動ではなかった。全社の安全活動の中に、各部門がやるべき活動のひとつとして組み込まれていた。

生産部門に課されていたのは、毎月1回、5S活動のビフォーアフターを報告すること。それとは別に、全社の管理職による安全パトロールがあり、そこで5S関係の指摘が出れば改善する、という流れもあった。

私の課では、何をやるかは各係ごとに自分たちで決める形にしていた。上から場所を指定されてやる掃除ほど、続かないものはない。自分たちの持ち場のどこが困っているかは、そこで作業している人が一番よく分かっている。

この「自分たちで決める」という設計自体は、間違っていなかったと思う。ただし、これだけでは足りなかった。

自主性だけに任せると、手を抜く

正直に書く。すべてを自主的な活動にしておくと、手を抜くことがあった。

当たり障りのない場所を清掃しただけで終わっていたり、ある程度のところで「やったこと」にしていたり。報告書は毎月きちんと上がってくるのに、現場は先月とたいして変わっていない。そういう月が何度もあった。

これはメンバーの意識が低いからではない。本業の生産があって、その合間にやる活動だからだ。納期に追われている月に、誰が自分から余計な片付けを増やすだろうか。私が現場側でも、同じことをしたと思う。

問題は、5S活動には締切がないことだった。いつまでにどこまで、が誰にも決められていない。だから後回しになる。やる気の問題ではなく、仕組みの問題だった。

外から来る予定に、5Sを抱き合わせた

そこで私がやったのは、締切を外から借りてくることだった。

現場には、放っておいても必ずやってくる予定がいくつかある。全社の管理職安全パトロール。本社役員の監査。そして来客。どれも日付が決まっていて、動かせない。

この予定に、5S活動を抱き合わせた。パトロールで指摘された項目は、そのまま翌月の5S活動のテーマにする。役員監査や来客の前には、対象エリアの整理整頓を活動として組む。

そうすると何が変わるか。「いつまでに」が勝手に決まる。しかも自分が言い出した締切ではないので、押しつけている感じにならない。「来月の頭に監査が来るので、この通路だけは片づけておきましょう」——この一言で、動きがまったく変わった。

ずるいやり方に見えるかもしれない。ただ、締切のない改善活動が現場で続いた例を、私は見たことがない。動く理由を用意するのは管理職の仕事だと思っている。人が入れ替わる現場をどうまとめるかという話は、人が定着しない現場を、どうまとめたかにも書いた。

実際にやっていた3つのこと

活動の中身として、繰り返しやっていたことが3つある。

1つめは、月1回の設備点検・メンテナンス日を使うこと。設備を止めて点検する日が月に一度ある。この日に現場を回り、気になるところをその場で伝えて改善を促した。稼働中は手が出せない場所も、止まっていれば触れる。ついでにやる、という形にできたのが大きかった。

2つめは、置き場所を決めて、モノを買うこと。棚やボックスを購入して、置き場を作る。「整理整頓しろ」と言うだけでは何も変わらない。置く場所がないから、床に置かれる。置き場を用意するのは、管理職にしかできない仕事だ。予算を取って現物を買う。ここを現場任せにしてはいけない。

3つめは、担当者を決めて安全活動に組み込むこと。エリアごとに担当を決め、5Sを個人の善意ではなく役割にした。誰の仕事でもない状態を放置すると、いつまでも誰もやらない。作業を人に定着させる考え方は、現場の属人化を崩したときの進め方と同じところがある。

朝礼で、しつこく「一仕事一片付け」と言い続けた

仕組みを作っても、日々の癖は変わらない。だから朝礼で、しつこく同じことを言い続けた。

一仕事一片付け。ひとつの作業が終わったら、その場で片付けてから次に行く。

製造現場で一番多いのは、いわゆるチョイ置きだ。あとで使うから、今は急いでいるから、と工具や部材を作業台や通路に置く。一つひとつは些細なのに、数が積み上がると現場は一気に散らかる。そして誰も、自分が置いたものだとは思っていない。

これは1回言って直るものではなかった。半年でも1年でも、朝礼で言い続ける。地味でうんざりする作業だったが、言い続けているうちに、チョイ置きは目に見えて減った。習慣になるまで言うしかない。管理職の時間の使い方としては、課長時代の1日を振り返った記事にも近いことを書いている。

5Sをやって、実際に変わったこと

効果として実感できたのは、主に3つだった。

物を探す手間が減った。置き場が決まっていれば、探す時間がゼロになる。一人あたり一日数分の話でも、人数と日数を掛ければ無視できない量になる。

設備の不具合を発見しやすくなった。これが一番大きかった。設備を清掃すると、油漏れや異音、部品の緩みといった異常が目に入る。汚れたままでは、漏れているのか元から汚れているのか区別がつかない。清掃は点検そのものだった。予防保全体制をゼロから作って突発故障を30%減らした話でも、出発点は現場をきれいにすることだった。

動線がよくなった。通路に物がなくなると、人も台車もまっすぐ動ける。結果として作業が速くなるし、ぶつかる・つまずくといった労災の芽も減る。安全活動の中身については、重大労働災害ゼロを6年間維持したときにやり続けたことに詳しく書いた。

5Sは、きれいにするための活動ではない

5Sを「掃除」だと思っている限り、現場は動かない。掃除は本業ではないからだ。

そうではなく、探す時間をなくす活動であり、設備の異常を見つける活動であり、人が安全に動ける道を作る活動だと位置づける。そして締切を外から借りてきて、置き場という現物を用意して、担当を決める。そこまでやって、ようやく回り始める。

報告書のためのビフォーアフター写真を撮り続けるだけなら、その時間は本業に回したほうがいい。やるなら、効果が出る形に組み替える。それを決められるのは、現場の管理職だけだ。


仕組みが形だけになるかどうかの分かれ目についてはISO内部監査で受けた指摘と、監査する側で気づいたこと|9001・14001を複合で受けた製造現場からにまとめています。


こうした現場の地道な改善を、職務経歴書でどう言語化するか。製造業の実績を書き起こすための型をまとめました。

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