製造業の人手不足に、現場はどう向き合ったか|経験者2人でフル生産を回した話

製造業マネジメントの現場から

人が足りない。募集をかけても来ない。それでも生産計画は下りてくる。

製造業の現場にいれば、一度は通る状況だと思う。私も経験した。しかもそれは、じわじわ人が減っていくタイプの人手不足ではなく、ある日いきなり訪れたものだった。

当時、私は係長だった。管理職になる前の話だ。あのとき何をしたのかを、順番に書いておきたい。

7人必要な現場に、経験者は2〜3人だった

状況を先に書く。

それまでは、日勤だけで稼働しても人が余るような受注状況だった。それが短期間で反転し、3交代でフル生産しても間に合うか分からないほどの受注が入ってきた。

体制を組み直すには、最低でも7人は必要だった。しかし現場にいる経験者は、自分を含めて2〜3人。数字だけ見れば、成立しない話だった。

人手不足というと「じわじわ足りなくなる」印象があるが、受注が動いた瞬間に一気に足りなくなることもある。むしろ、そちらの方が厄介だ。準備する時間がない。

まず、人を増やすために動いた

最初にやったのは、外から人を持ってくることだった。

上長への増員申請。他部署への応援要請。そして、中途採用の面接にも自分が出た。

面接に現場の人間が入ることには意味がある。人事だけで進めると、経歴上は問題なくても、実際の工程で戦力になるかどうかの判断がぶれる。どの設備を触れるのか、交代勤務に入れるのか、現場で聞かなければ分からないことがある。忙しい時期ほど採用に関わる時間は惜しいが、ここを人任せにすると、入ってきた人が定着せず、結局もう一度同じ苦労をすることになる。

ただ、正直に書くと、外から人を入れる手はすぐには効かない。申請しても増員が決まるまで時間がかかるし、応援に来てもらっても工程を知らない。採用が決まっても、戦力になるまでには育成期間が要る。

つまり、人を増やす努力と並行して、今いる人でどう回すかを考えるしかなかった。

今いる人の「できること」を増やした

人数を増やせないなら、一人あたりが対応できる範囲を広げるしかない。ここに一番時間を使った。

新人にも既存メンバーにも、それぞれ教育計画を立てた。誰に何をいつまでにできるようになってもらうか。行き当たりばったりで教えると、忙しさに流されて教育が後回しになる。計画に落として初めて、日々の生産の中に教育を組み込める。

並行して進めたのが、メンテナンス方法のマニュアル化だった。設備の対応が特定の人しかできない状態は、人手不足の現場では致命的になる。その人が休んだ日に、ラインが止まる。手順を書き出し、対応できるメンバーを増やしていった。

生産計画のシミュレーションも繰り返した。どの人員配置なら、どこまで作れるのか。数字で見せられないと、増員の必要性を上に説明することもできない。感覚で「厳しいです」と言い続けても、状況は動かなかったと思う。

設備側の能力強化にも手を入れた。人を増やせないなら、同じ人数で作れる量を増やすしかない。

足りない分は、自分が埋めるしかなかった

それでも、頭数は足りなかった。

結果として、私自身が現場オペレーターの頭数に入っていた。正確に言えば、入らざるを得なかった。管理する立場の人間が現場に入り続けるのは、本来は健全ではない。管理職やリーダーが手を動かしている間、全体を見る人がいなくなるからだ。

ただ、あの局面で「自分は入らない」という選択肢はなかった。理想論で回らない時期は、確かにある。

大事なのは、それを常態にしないことだと思う。自分が入るのは一時的な措置だと自覚したうえで、並行して教育とマニュアル化を進める。抜けられる状態を作りながら、今は入る。この両立ができないと、現場に入りっぱなしのまま何年も過ぎてしまう。

負担のかけ方を、意識的に偏らせた

人が足りない現場で、私が決めていたことがある。

難易度の高い業務と、責任が大きく伴う業務は、すべて自分が立ち会うか、自分で実施する。メンバーにそこを背負わせない。

人手不足のときに全員へ均等に負担を配ると、経験の浅いメンバーが荷の重い仕事を抱えることになる。そうなると、ミスが出る。ミスが出れば、本人が萎縮する。萎縮すれば、さらに人が育たなくなる。悪い循環に入る。

だから、重い部分は意図的に自分に寄せた。そのうえで、少し余裕が出たタイミングで、レクチャーしながら一緒に問題解決に当たった。忙しさの真っ最中に教えても頭に入らないが、落ち着いた場面で一緒に手を動かすと、確実に身につく。

結果として、これが一番の教育になったと思っている。負担を減らすためにやっていたことが、スキルアップにつながっていた。

結局、乗り切れた

この時期は、最終的に乗り切ることができた。生産は回り、部署の業績にも大きく貢献できた。

振り返って思うのは、人手不足は「人を採る」だけでは解けないということだ。採用は時間がかかるし、採ってすぐ戦力にはならない。同時に、今いる人ができることを増やし、特定の人しかできない仕事を減らし、数字で状況を説明して手当てを引き出す——この全部を並行してやって、ようやく足りるようになる。

いま人が足りない現場にいる方へ。増員が通らないことを嘆いても、来月の生産は待ってくれない。動かせるところから動かすしかない。少なくとも私は、そうやって切り抜けた。

この時期の全体像——増産対応そのものの記録は、別の記事に書いています。


こうした現場の経験が、社外でどう評価されるのかを書いた記事もあります。


特定の人しかできない作業を減らす取り組みは、別記事で詳しく書いています。


3交代の体制そのものをどう回したかは、こちらに書いています。


人が足りないことと、人が定着しないことは別の問題でした。入れ替わりが続く現場をどうまとめたかはこちらです。


増員申請がなかなか通らない現実と、それでも通すためにやったことは別記事に書いています。

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