管理職になって最初にやりがちなことが、答えを教えてしまうことです。私もそうでした。効率を考えると、正解を早く伝えた方がいい。でも、それをやり続けると、指示を待つ人を量産することになります。
35名の製造部門を統括する中で、私が部下育成の軸に据えたのは「自分で考えさせること」でした。この記事は、その具体的な実践と、難しかったことを書いたものです。
基本だけ教えて、あとは自分で考えさせる
OJTで意識していたのは、教えすぎないことです。業務の基本的なことは伝える。でもその先は、なるべく自分で考えさせる。「どうすればいいですか」と聞かれた時に、すぐ答えを返さない。
代わりにやっていたのは、ヒントを小出しにすることです。「こういう観点から考えてみたらどうか」「似たような事例を思い出してみて」という形で、考える糸口だけ渡す。答えそのものは、最後まで言わないようにしていました。
これが思っていた以上に難しかった。答えを言いたくなる衝動が、常にありました。目の前で部下が迷っているのを見ていると、早く教えてあげたくなる。その衝動を抑えて、部下のペースで見守ることが、育成において一番しんどい部分だったと思います。
課題の難易度は「少し高め」に設定する
昇格者研修では、通信教育や外部研修の受講に加えて、現場の課題を自ら設定して解決する「改善課題」に取り組ませました。
課題を設定する際に意識していたのは、難易度をやや高めにすることです。簡単に解ける課題は、考える力を鍛えません。かといって難しすぎると、途中で詰まって動けなくなる。「今の実力より少し上」のラインを設定することで、考え続ける経験を積ませるようにしていました。
まず自分で考えさせ、行き詰まったところでアドバイスを入れる。その繰り返しです。答えを渡すのではなく、考え方のプロセスに伴走するイメージでやっていました。
「伸びた」と感じた瞬間
育成の手応えを感じたのは、指示を待つ姿勢が変わった時です。
最初は「どうすればいいですか」と聞いてくる。それが「こうしようと思いますが、どうでしょうか」に変わる。さらには、相談なく自分で判断して動いている場面が増えてくる。その変化が見えた時に、育成がうまくいっていると感じました。
主体的に動ける人間になるまでには時間がかかります。答えを教えていれば早く動けるようになるかもしれないけれど、自分で考える力はつかない。その違いが、数年後に大きく出てきます。
伝え続けた言葉
部下に繰り返し伝えていたことがあります。
「3年後、5年後の自分はどうなっていたいか、想像しておきなさい。」
どこで仕事をしているかはわからない。会社が変わることもあるかもしれない。それでも、ワンランク上の立場の人が「こういう人材がほしい」と思う人間に近づけているかどうかを、常に自分に問い続けなさい、と。
今の仕事を言われた通りにこなすだけでは、その問いに答えられません。自分で考え、自分で動く。その習慣が、3年後・5年後の差になる。それを伝え続けた理由は、自分自身がそう感じてきたからでもあります。
管理職の育成は、即効性がない
部下育成は、成果がすぐ見えない仕事です。答えを教えれば今日の問題は解決する。でも、考える力がついた部下は、来年・再来年に結果を出してくれます。
管理職としての仕事は、目の前の数字を動かすことだけではありません。自分がいなくなった後も動き続ける組織を作ることが、本当の意味での管理職の役割だと、私は思っています。
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